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65歳以上では7人に1人が認知症

最終更新日 2023/10/23

1:認知症は何歳から始まるか

1-1:認知症の平均発症年齢と割合に関して

認知症の平均発症年齢とその割合について、高齢者の7人に1人が認知症になる現象、そして高齢社会の進行と今後において認知症についての理解が重要であることについて説明します。

1-1-1:認知症の平均発症年齢と割合

認知症は、高齢者によく見られる病状の一つで、その発症年齢には幅があります。一般的に、認知症は50歳以上の高齢者に多く見られ、高齢になるほど発症のリスクが増加します。しかし、60歳以上の高齢者において特に顕著です。具体的な平均発症年齢は国や地域によって異なりますが、60代から70代にかけて多くの人が認知症の初期症状を経験することがあります。

また、認知症の割合は高齢者の中で非常に高いです。一般的に、高齢者の中で認知症になる割合は約7人に1人とされています。この割合は高齢者の増加に伴い、認知症の患者数も増加しています。高齢者が増える現代社会において、認知症は重要な公衆衛生上の課題となっています。

出典:「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)より算出

1-1-2:高齢社会の進行と認知症への理解

えると、認知症患者数も増加する傾向があります。このことから、認知症についての理解がますます大切となります。

認知症は患者だけでなく、家族やケアギバーにも影響を及ぼします。患者の特定のニーズに合わせたサポートや適切なケアを提供するために、認知症について正確な知識を持つことが必要です。また、早期の診断と適切な治療が認知症患者の生活の質を向上させる鍵となります。

認知症に関する教育や啓発活動は、高齢者やその家族、一般の人々に向けて行われるべきです。認知症の兆候や症状、適切なサポート方法についての情報提供は、高齢者の生活をより健康的で充実したものにするために不可欠です。高齢社会において、認知症を「知る」ことが、患者とその周りの人々にとって大事な一歩です。

1-2:認知症の初期症状と診断方法

      認知症の初期症状と診断方法について説明します。認知症の診断は、基本的な流れとして問診、面談・診察、検査などが行われます。

1-2-1:認知症の初期症状

認知症の初期症状は、個人によって異なることがありますが、一般的に以下のような症状が見られることがあります。

①記憶障害: 新しい情報を覚えにくくなることや、日常の出来事を忘れることがあります。これは短期記憶の障害として現れます。

②言語障害: 言葉の理解や表現に問題を抱えることがあります。適切な言葉で思考や感情を表現できないことがあります。

③判断力の低下: 簡単な判断や問題解決が難しくなり、日常生活での判断力が衰えます。

④時間や場所の混乱: 現在の日付や場所を把握できなくなり、混乱することがあります。時には迷子になることもあります。

 

⑤性格や行動の変化: 以前とは異なる行動や反応が見られ、性格に変化が現れることがあります。

⑥自己ケアの困難: 自分の身の回りの世話や日常生活の活動がますます難しくなります。

1-2-2:診断方法

認知症の診断には、医師や専門家が様々な方法を組み合わせて行います。基本的な診断の流れは次の通りです。

①問診: 患者や家族に対して症状や生活の変化について質問し、詳細な情報を収集します。これにより、初期症状や病歴を把握します。

②面談・診察: 医師や専門家が患者と面談し、認知症に関する症状や問題について詳しく話を聞きます。また、身体的な検査や神経学的な評価も行われることがあります。

③検査: 認知症の診断には、神経心理学的なテストや画像検査(脳のMRIやCTスキャンなど)が使用されることがあります。これらの検査は認知機能の評価や脳の異常を検出するのに役立ちます。

④血液検査: 一部の場合、血液検査が行われて、他の疾患や栄養不足による症状を排除するための情報を提供します。

診断は専門医師によって行われ、症状と検査結果に基づいて行われます。早期の診断は、適切なサポートや治療の開始につながり、患者とその家族にとって重要です。

2:認知症のリスク要因

2-1:年齢と認知症の関連

年齢と認知症の関連について説明します。

認知症は、一般的に高齢者により頻繁に発症する傾向があります。以下は年齢と認知症の関連についての主なポイントです

①高齢者によく見られる: 認知症は、高齢者により頻繁に発症します。特に、65歳以上の人々に認知症がより一般的です。

②発症リスクの増加: 年齢が上がるにつれて、認知症の発症リスクが増加します。高齢者の中には、認知症を経験する可能性が高くなります。

③アルツハイマー病との関連: アルツハイマー病は最も一般的な認知症の原因の一つであり、高齢者によく見られます。年齢が上がるにつれてアルツハイマー病の発症リスクも増加します。

④若年性認知症: 一方で、若年性認知症と呼ばれる状態も存在します。これは通常、40代から65歳未満の比較的若い年齢で認知症が発症する状態です。

⑤予防と注意: 年齢とともに認知症のリスクが増加するため、予防や早期の診断が重要です。健康的な生活習慣、認知症のリスク因子の管理、定期的な健康チェックが役立つことがあります。

要するに、高齢者において認知症の発症リスクは高まりますが、若年性認知症も存在し、年齢以外の要因も影響します。認知症のリスクを管理し、早期の診断と適切なサポートを受けることが重要です。

2-2:他の病気との関連性

認知症と他の病気との関連性について説明します。認知症は、他の健康状態や疾患と相互に関連していることがあります。以下は、その主な関連性についてのポイントです

①心血管疾患: 心臓病や高血圧などの心血管疾患は、認知症と関連性が高いとされています。これらの疾患が不適切に管理された場合、脳への血液供給が不足し、認知症のリスクが増加する可能性があります。

②糖尿病: 糖尿病も認知症と関連があると考えられています。高血糖が脳に悪影響を及ぼし、認知症の発症リスクを増加させることが報告されています。

③うつ病: 認知症とうつ病は相互に関連しています。うつ病の症状が長期間続く場合、認知症のリスクが高まることがあります。また、認知症患者にはうつ病が合併することも一般的です。

④脳損傷: 頭部外傷や脳損傷は、認知症のリスクを増加させる可能性があります。特に、重度の脳損傷は認知症の発症に関連することがあります。

⑤喫煙と飲酒: 喫煙や過度のアルコール摂取は、認知症のリスク因子となることが研究で示唆されています。

⑥肥満: 肥満や過体重も認知症との関連が指摘されています。肥満が心血管疾患や糖尿病のリスクを高め、それに伴い認知症のリスクも増加する可能性があります。

⑦運動不足: 運動不足は認知症のリスクと関連があります。適度な運動は脳の健康を維持し、認知症の予防に役立つことが示されています。

⑧遺伝因子: 家族歴も認知症のリスクに影響を与える要因です。遺伝子に関連する認知症の疾患も存在します。

これらの要因は、認知症のリスクを増加させる可能性があるため、予防と管理が重要です。健康的な生活習慣、定期的な医療チェック、リスク要因の管理が、認知症の予防に役立つことがあります。また、早期の診断と適切な治療も重要です。

3:認知症予防と対策 

3-1:認知症予防のための運動と食事

3-1-1:運動

適度な運動は認知症予防に重要です。運動による血行改善や脳への酸素供給の増加が、認知機能の維持や改善に寄与します。以下は運動に関するポイントです。

①有酸素運動: 有酸素運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)は心臓血管機能を向上させ、脳に酸素を供給します。週に数回、適度な時間をかけて行いましょう。

②筋力トレーニング: 筋力トレーニングは筋肉を強化し、バランス感覚を向上させます。これにより転倒のリスクを減少させ、認知症予防に寄与します。

③認知トレーニング: 認知トレーニングゲームやパズルなどの活動は、脳の活性化に役立ちます。日常生活で脳を使うことも大切です。

3-1-2:食事

健康的な食事は認知症予防にも影響を与えます。地中海食事が認知症予防に有益とされていますが、日本ではそれを完全に模倣することは難しいかもしれません。代わりに、以下の食事のポイントに注意しましょう。

①野菜・果物・豆: 食事には豊富な野菜、果物、および豆を含めることが大切です。これらの食品には抗酸化物質や栄養素が豊富に含まれ、脳の健康をサポートします。

②魚: 魚はOmega-3脂肪酸が豊富であり、脳機能に良い影響を与えます。特に青魚(サケ、マグロ、サバなど)はおすすめです。

③緑茶: 日本茶や緑茶には抗酸化物質やリラックス効果があり、認知症予防に役立ちます。

④赤ワイン: 赤ワインには抗酸化物質であるレスベラトロールが含まれています。ただし、適度に摂取することが大切で、飲酒の過剰摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

健康的な食事と運動は、認知症予防において重要な役割を果たします。バランスの取れた食事習慣と定期的な運動を組み込み、脳と身体の健康を維持しましょう。また、個々の健康状態に合わせて医師や栄養士のアドバイスを受けることもおすすめです。

3-2:認知症予防における生活習慣病の改善

認知症予防における生活習慣病の改善は、健康的な生活習慣の確立を通じて認知症のリスクを低減する重要な一環です。以下に、生活習慣病と認知症の関連性、および予防のためのアプローチについて説明します。

3-2-1生活習慣病とは

生活習慣病(Lifestyle Diseases)は、主に日常の生活習慣や食事、運動不足、喫煙、過度なアルコール摂取などが原因となり、発症しやすい疾患の総称です。代表的な生活習慣病には、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、心臓病、脳卒中、がんなどが含まれます。

3-2-2:認知症との関連性

生活習慣病と認知症には密接な関連性があります。以下はその主な点です

①血管の健康と認知症: 脳の血管の健康が損なわれることは、認知症のリスクを高める要因です。高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、血管に損傷を与え、認知症の発症リスクを増加させる可能性があります。

②炎症と認知機能: 生活習慣病は体内の慢性的な炎症を引き起こすことがあり、これが認知機能の低下と関連しています。炎症が脳に影響を及ぼすことで、認知症のリスクが増大します。

③糖代謝と脳への影響: 糖尿病は脳の健康に悪影響を与える可能性があり、高血糖状態が認知機能の低下と関連しています。

3-2-3:認知症予防へのアプローチ

生活習慣病の改善は、認知症予防のための重要なステップです。以下はその具体的なアプローチです

①バランスの取れた食事: 食事は心臓血管系の健康に影響を与え、それが認知症リスクにも影響します。野菜、果物、全粒穀物、魚、健康な脂肪を摂取し、飽和脂肪や糖分の摂取を制限しましょう。

②適度な運動: 適度な運動は心臓血管の健康を保ち、認知機能を向上させるのに役立ちます。週に150分以上の有酸素運動を行いましょう。

③ストレス管理: 長期間のストレスは慢性炎症を引き起こす可能性があるため、ストレス管理が重要です。リラクゼーション技術やメンタルヘルスのケアを取り入れましょう。

④禁煙と過度な飲酒の回避: 喫煙と過度なアルコール摂取は認知症のリスクを高める要因です。禁煙を検討し、適度な範囲でアルコールを摂取しましょう。

⑤定期的な健康チェック: 高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病のスクリーニングと管理が大切です。

生活習慣病の予防と認知症予防は共通の要素が多く、健康的な生活習慣の実践が認知症リスクを低減させる助けになります。

3-3:認知症予防のための適度な生活とケア

認知症予防のための適度な生活とケアについて以下にまとめます。

①適度な身体活動

適切な運動は脳の健康を維持し、認知症のリスクを低減させます。ウォーキング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を週に150分以上行いましょう。

②健康的な食事

食事は脳の健康に貢献します。野菜、果物、全粒穀物、魚、健康な脂肪(オリーブオイル、ナッツ、アボカド)、豆類を摂取しましょう。食事の多様性と栄養バランスに気を付けましょう。

③社会的な活動

社会的な交流は脳の活性化に役立ちます。友達との会話や交流、クラブやボランティア活動に積極的に参加しましょう。

④脳トレーニング

脳トレーニングゲームやパズル、読書など、脳を刺激する活動を取り入れましょう。新しいスキルを学ぶことも脳を活性化させます。

⑤ストレス管理

長期間のストレスは脳に悪影響を与えることがあります。リラクゼーション技術や深呼吸、瞑想などのストレス管理方法を実践しましょう。

⑥ 睡眠の質

良質な睡眠は脳の健康に不可欠です。規則的な睡眠スケジュールを保ち、快適な寝室環境を整えましょう。

⑦健康状態の管理

生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)の管理が認知症予防に重要です。医師の指導に従い、薬物療法や食事療法を実践しましょう。

⑧定期的な健康チェック

認知症リスク因子(高血圧、糖尿病、脂質異常、心臓病など)のスクリーニングを定期的に受け、早期の問題を発見しましょう。

⑨安全な環境の整備

転倒や事故を防ぐために、住環境を安全に整備しましょう。手すりの設置や階段の滑り止めなどが役立ちます。

⑩医療専門家のサポート

健康に関する不安や症状がある場合、医療専門家に相談し、適切なアドバイスとケアを受けましょう。

認知症予防は生涯にわたる継続的な取り組みが必要です。

4:まとめ

4-1:認知症の早期理解と予防の重要性

認知症は認知機能の低下を伴う疾患で、高齢者によく見られます。認知症の理解と予防が重要です。

認知症患者は記憶、思考、判断力、コミュニケーション能力などに影響を受け、日常生活に制約が生じます。

認知症患者とその家族には支援が必要で、早期の診断と適切なケアが有益です。

親が同じ話を繰り返す背景には認知症や記憶障害が関与し、理解と優しい対応が必要です。

認知症の症状と特徴は記憶障害、判断力の低下、言語障害、時空間の混乱、個性の変化などが含まれます。

認知症は日常生活に大きな影響を与え、自己ケアや日常の活動が難しくなります。

以上のポイントを押さえ、認知症についての理解と予防に取り組むことが大切です。認知症患者とその家族のサポート、健康的な生活習慣の確立、医療専門家との連携が重要です。

4-2:健康な脳を維持するための日常的なケア

健康な脳を維持するためには、以下のポイントを日常的に実践することが重要です。

①健康的な食事習慣: 脳の健康には栄養が不可欠です。野菜、果物、全粒穀物、健康な脂肪、タンパク質を含む食事を摂りましょう。特に、Omega-3脂肪酸を豊富に含む魚を積極的に食べることがおすすめです。

②運動: 適度な運動は血行を改善し、脳への酸素供給を増加させます。有酸素運動や筋力トレーニングを週に数回行い、脳と身体を活性化させましょう。

③ストレス管理: 長期間のストレスは脳に悪影響を与える可能性があるため、ストレス管理が重要です。リラクゼーション技術やメンタルヘルスのケアを取り入れましょう。

④十分な睡眠: 睡眠は脳のリセットに不可欠です。十分な質の高い睡眠を確保しましょう。

⑤社会的活動: 社会的な交流や認知トレーニングは脳の活性化に役立ちます。友人や家族との交流を楽しみ、新しいことを学ぶ機会を作りましょう。

⑥定期的な健康チェック: 高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病のスクリーニングと管理が大切です。

健康な脳を維持するためにこれらの要素を取り入れることで、認知症のリスクを低減させることができます。日常生活で健康的な習慣を実践し、認知症予防に貢献しましょう。

参考文献:

認知症の検査方法とは?

認知症と共に生きる高齢者の人口

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