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認知症を診療するタイミングや診療科、治療について

最終更新日 2023/10/23

認知症は、高齢者にとって深刻な課題となりうる疾患ですが、早期の診療と適切な治療によってその進行を遅らせることが可能です。この記事では、認知症の診療におけるタイミング、適切な診療科の選択、そして効果的な治療方法についてご紹介しましょう。

1:認知症を診療する専門の医師と診療科

1-1:認知症の診断と治療を行う診療科

認知症の診断と治療を行う診療科は主に5つあります。

  1. 1:物忘れ外来 
  2. 2:認知症専門外来 
  3. 3:メンタルクリニック 
  4. 4:精神科・神経内科 
  5. 5:認知症疾患医療センター

特に「認知症専門医」という認定を受けた医師がいるところは認知症にとても詳しい医師がおり、専門的な治療を受けられるのでおすすめです。

診療科

①精神科:認知症の混乱につながる心理症状(BPSD)に対応できます。また患者様に寄り添った受診を得意しています。まずは本人を安心させたいという点で選ぶなら精神科がいいでしょう。

②脳神経内科・脳神経外科:脳や脊髄、神経、筋肉の疾患を診てくれます。身体を動かすことや考える事、覚えることがうまくできなくなったときに頼りになります。

③老年科:高齢者の脳や心の病全般に対応している科です。物忘れや理解力の低下、気分の落ち込みや意欲低下等の症状を診てくれます。

④物忘れ外来:「忘れっぽくなった」という症状に対応してくれる専門外来です。物忘れには、認知症のほかにも病気が原因の場合もあれば加齢による場合もあります。

1-2:認知症対応の病院や医療機関の選び方

認知症は適切治療を受けられれば早期発見・早期治療で落ち着く場合があります。

しかし医療機関によってどの程度の症状まで対応できるかは違いがあり、「暴言暴力に困って苦労して連れて行ったのにその病院では対応できないと言われた」ということもあるそうです。

受診先で納得のいく診療を受けられないと、本人も以降の受診を拒否したり、家族もまた違う病院を探して連れて行くのが困難になります。

1-2-1:医療機関の選び方

①認知症患者に対する専門的な医療チームがいるかを確認する(神経科、精神保健専門家、看護師、リハビリテーションスペシャリスト等)

②認知症患者の個別のニーズに合わせた総合的なプランを提供する医療機関を探す(認知症の段階や症状に応じて適切な治療法や介護サービスを提供するかどうか)

③診断後のフォローアップケアや患者と家族へのサポートを提供するかどうかを確認

④医療機関の場所やアクセス性を考慮する(患者と家族が通院しやすいか)

1-3:認知症の検査の種類と費用

昨今の高齢化に伴い、認知症の発症率や有病率は世界的に増加しています。

①認知評価スケール:認知症の早期兆候を評価するために使用されるスケールでMini-Mental State Examination (MMSE) や Montreal Cognitive Assessment (MoCA) などがあります。一般的に医師や専門家によって実施され、症状の程度を評価します。

通常医師との診察とともに行われるため診療費用に含まれます。一般的に保険が適用されますが、自己負担が発生する場合もあります。(3割負担:240円)

②脳画像検査:脳の異常を視覚化するためにMRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピュータ断層撮影)が使用されます。これにより、脳の萎縮や損傷を確認し、他の疾患と認知症を区別するのに役立ちます。

MRIやCTスキャンの費用は地域や医療機関によって異なります。保険が適用される場合もありますが、自己負担が必要なこともあります。(頭部MRIで3割負担で3.990~4.860円)

③脳波検査:脳の電気活動を測定するために行われる。発作性活動や非定型的な脳波パターンを検出するのに使用されます。

④血液検査:特定の疾患や栄養不足を特定し、認知症の原因を特定するのに役立ちます。

検査費用に関しては医療機関や所在地によって異なる為保険適用や医療機関による価格設定を確認し、医師や医療専門家と相談して最適な検査プランを立てるプランを立てる事が重要です。

1-4:認知症の検査結果の告知と早期診断の重要性

認知症が疑われる場合、同様の症状を示しながらも治療が可能かつ急がれるその他の疾患の可能性もあります。

まずは早期に診断を受け、鑑別診断をしてもらうことが大切です。

認知症以外の疾患が除外され、認知症であることが確定しても早期から様々な治療や介護サービスなどを受ければその後の生活の質が大きく高まります。

早期発見で今後の治療や介護の方針を、ご本人とご家族がゆっくりと話し合い決定することもできます。また早期から認知症の原因疾患やタイプを知っていれば、ご家族がそれに応じた対応や治療を学ぶ余裕があります。

1-5:認知症にかかわる医療機関との連携の重要性

認知症は高齢者に特に影響を与える疾患であり、その管理とケアには複数の医療機関との連携は不可欠です。

医療機関と連携をすると早期診断と治療の促進ができたり、病状の継続的なモニタリング(認知症患者の状態は時間とともに変化するため専門家の連携によって、病状の進行や合併症の監視が可能となる)ができるようになります。

また、認知症は複数の要因に関連しており医療的な側面だけでなく精神的、社会的、環境的な要因も影響を与えます。医療機関との連携によってホリスティックカウンセリングアプローチが実現し患者の多面的なニーズに対処することができます。

認知症患者の家族や介護者も支援が必要です。これも連携を行うことによりカーギパーや家族への救済、カウンセリング、リソース提供が行われ、介護者の負担が軽減されます。

認知症患者は緊急事態に対処する能力が低下することがあります。これも連携を行うことによって緊急時の対応策やプロトコルを確立し、患者の安全を保つことができます。

2:認知症検査の受診のタイミング

2-1:認知症検査を受けるタイミングとサイン

①年齢とリスク因子:50歳以上の成人は認知症のリスクが増加する可能性がある為、定期的な認知症検査を検討すべきです。特に家族に認知症の歴史がある場合や、心血管疾患、糖尿病、高血圧などの慢性疾患がある場合は注意が必要です。

②症状の変化:記憶力の減退、語彙力の低下、物忘れ、判断力の低下、日常生活の課題に対する困難など、認知症に関連する症状が現れた場合、早急に医師に相談し検査すべきです。

③家族や介護者の関心:家族や介護者が患者の認知症症状に気づいた時も検査を受けるタイミングです。家族や介護者の観察力は非常に貴重であり早期発見に繋がることがあります。

④医師の推奨:主治医や専門家が認知症の疑いがあると検査を推奨する場合があります。

2-2:認知症検査の遅延とそのリスク

認知症は進行性の疾患の為、検査が遅延し発見が遅れると有効な治療法や介入の機会が失われ、症状の進行が早まる可能性があります。

症状が進行するにつれて患者との日常生活における課題が増加します。適切な検査が遅れると患者の生活の質が低下し自立性や安全性に関する問題が増加する可能性があります。その結果、家族に大きな負担がかかり身体的負担、精神的負担が大きくなります。また症状が悪化すると医療費が増加することがあります。緊急医療や入院のリスクが高まり医療費の負担も大きくなる可能性があります。

また社会的な活動やコミュニケーションが難しくなることがある為、患者が孤立感を感じやすくなり、精神的な健康に悪影響を及ぼすことがあります。

認知症検査の遅延は患者と家族にとって深刻なリスクをもたらす可能性があります。早期診断と介入によってこれらのリスクを最小限に抑え患者の生活の質を向上させるための選択肢を手に入れることができます。

3:認知症の治療

3-1:認知症の薬物療法とその効果

認知症患者の生活の質を向上させるために様々な治療法が検討されており、薬物療法もその中の一つです。

薬物療法

①コリンエステラーゼ阻害薬:EX)ドネペジルなど 脳内のアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質の量を増やすことで、認知症の症状を改善し認知機能を一時的に向上させる効果があります。

②NMDA受容体拮抗薬:EX)メマンチン グルタミン酸受容体に作用し、神経細胞の損傷を軽減し認知症の進行を遅らせることがあります。主に中等度や高度のアルツハイマー型認知症の治療に使用されます。

療法開始時は副作用が起きていないか本人に合っているかをしっかり観察しましょう。本人がどのような状態なのか確認して、日付や状態、起きたことをメモしたり記憶を残しておくようにしましょう。

薬物療法は、認知症の進行を完全に停止させることはできませんが、症状の軽減や生活の質の向上に寄与することがあります。治療薬の選択と効果は個人によって異なり、医師との協力が重要です。

3-2:認知症の様子に合わせた対応方法と介護施設の選び方

症状が進行していくにつれて自宅で介護をする事が困難になるケースもみられます。そこで選択肢として出てくるのが介護施設への入所です。

認知症の方の介護施設探しは早めがおすすめです。

認知症はある日いきなり進行するものではなく、徐々に症状が進んでいく事が特徴です。状況によっては半年から1年ほどで進行してしまうケースもあります。

3-2-1:早めに介護施設を探すことによるメリット

①ご本人の意向も取り入れることができる

認知症と診断されても軽度であれば意思疎通が可能であり、要介護者ご本人がどのような生活を送りたいのかを聞けます。できるだけ長く自宅で過ごしたいのか、施設での生活を視野に入れても問題ないのかなど、早いうちなら意向を取り入れることが可能でとても重要です。

②ご本人の負担を減らすことができる

症状が進行すると新しい生活に慣れるのに時間がかかるため、ご本人にかかる負担が大きくなります。症状が軽いうちに施設へ入所することで適応力も高い為に施設での生活に早めに馴染むことができます。

③家族の負担も軽減することができる

ご本人の判断能力が下がってくるとご家族が施設入所を判断することになります。この時ご本人の意向とあっていたのか悩んでしまったり、この判断は間違っていたかもしれないと後悔したりするかもしれません。

3-2-2:要介護度によって認知症の方が入居できる施設を把握する

①特別養護老人ホーム(要介護3以上)

「特養」と呼称されることも多い施設で介護保険施設の一つです。公的な施設であるため民間よりも低い料金で利用できます。

②グループホーム

「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれる介護形態です。

65歳以上で要支援2もしくは要介護1以上の認定をうけ、なおかつ医師の診断書が交付された、認知症を患っている高齢者の方が利用できる施設です。

③有料老人ホーム

高齢者向け住宅に分類される施設です。

介護専用型老人ホームでは要介護1〜5の方が入所可能です。

介護保険制度上で「特定施設入居者生活介護」指定を受けており、職員の数や設備基準、運営基準等が細かく定められています。

④サービス付き高齢者住宅

「サ高住」と呼ばれる住宅で、民間企業が運営しています。バリアフリー対応の賃貸住宅を指します。主な入居者は、自立しているか、もしくは介護度が軽度な高齢者です。日中は、医療・介護系の有資格者や生活相談員などが常駐しており、入居されている方の安否確認や生活支援サービスを受けられます。

3-2-3:認知症の方の介護施設を選ぶポイント

①利用目的をはっきりさせておく

介護施設は、目的によって適している施設が異なります。まずは「どのような目的で利用するのか」「選ぶ基準は何なのか」を明らかにしておかなくてはいけません。

要介護度が上がり、リハビリや介護を受けたいのならば、特養への入所を検討される方が多いでしょう。軽度であるが、家族の負担を軽減する目的であれば、グループホームや有料老人ホームが選択肢に上がってくるかと思います。自宅の近くなどに、介護に対応したサ高住があれば、そちらを検討する可能性もあるでしょう。

②要介護度に合っているかを把握する

同じ形態でも、施設によって入所可能としている要介護度も異なるため、個々の施設の概要を把握しておく必要があります。医療ケアにどの程度対応できるか、職員同士の連携体制が整っているかなども、事前に確かめておきたい点です。

③できるだけご本人と一緒に施設見学へ行く

「今までのご本人の生活スタイルがどのくらい継続できるのか」「職員はどのような対応をするのか」「既に入居されている方の様子はどうなのか」などを自分の目で見つつ、不安な点があれば積極的に職員の方に質問しましょう。

④ご本人の希望に沿って適した施設を選ぶ

介護施設を選ぶうえで最も重視すべき点は「ご本人の希望」です。少しでも長く自宅で過ごしたい気持ちを誰もが持っています。前向きな気持ちを持ち続けるのは、簡単ではありません。しかし、ご本人が少しでも快適に過ごせるように工夫されているのが、認知症対応の介護施設です。また体験入所などを実施している介護施設もありますので、ご本人の希望に加えてご本人の体調やご家族の意向、要介護度に応じた対応の有無などを加味しながら、施設を訪れてみてはいかがでしょうか。

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