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認知症の種類と原因・症状を解説!

最終更新日 2023/10/23

本記事では、認知症に焦点を当て、その種類、原因、症状について詳しく解説します。アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症など、様々なタイプの認知症にはそれぞれ異なる特徴があります。例えばアルツハイマー病は異常なたんぱく質の蓄積が特徴的であり、血管性認知症は血管の問題による認知機能の低下が見られます。各認知症の原因に迫りつつ、それに伴う症状や日常生活への影響にも焦点を当て、わかりやすく解説します。

1:認知症の種類

1-1:アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、65歳以上の人で最も多い認知機能の障害や記憶力の喪失を特徴とする進行性の神経変性疾患で、脳の神経細胞が減り、脳が小さく委縮することで症状が現れます。主な症状には記憶の無意識、認知機能の低下、言語障害、空間認識能力の無意識、行動・性格の変化が含まれます。

診断には、詳細な病歴、神経評価、認知テスト、画像検査、血液検査が使用されます。現在、完全な治療法は存在しないですが症状の管理や進行の遅延のための進行を遅らせる作用が期待できる抗認知症薬の投薬や運動療法や回想法などの個々に合わせたプログラムによる認知リハビリテーションを行うことで予防になるため

健康的な生活の維持、認知活動の継続、社会的つながりの維持が重要です。

アルツハイマー型認知症は、患者や家族にとって難しい病であり、専門家の支援と理解が必要となっております。

1-2:レビー小体型認知症 

レビー小体型認知症は、神経変性疾患の一つでアルツハイマー型認知症、血管性認知症に次いで多い認知症です。

アルツハイマー型認知症やパーキンソン病にも類似性があるため、診断が難しい場合がよくあります主な症状には認知機能の低下、睡眠障害、空間認識や知覚処理に異常が発生し幻覚や錯覚が起こります。また、パーキンソン症状​が見られ、筋肉のこわばり、歩行困難が発生することが含まれます。

診断には、詳細な臨床評価、脳画像検査、神経心理学的テスト、血液検査などが含まれます。また、症状の変動性や特徴的な診断基準に基づいて行われます。

現在、レビー小体型認知症に対する特効薬は存在しませんが、症状ごとの治療が行われます。認知機能障害に対しては抗認知症薬、パーキンソン症状に対しては抗パーキンソン薬、レム睡眠行動異常には不眠症治療薬などが用いられることもあります。

本人の気持ちに配慮したケア、症状に合わせた環境調整を行います。転倒のリスクが高いレビー小体型認知症では、急な声掛けをして驚かせない、室内の段差をなくすなどの転倒・骨折予防も大切です。

その特有の症状や進行パターンに注意を払うことが診断と治療の鍵となります。

1-3:前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、神経変性疾患の一つで、認知機能の障害を引き起こす病気でほとんどが70歳までに発病します。この疾患は主に前頭葉と側頭葉と呼ばれる脳の特定の領域に異常がありますができるため、個性や行動、社会的な適応能力に変化をもたらします。

特徴的な症状は多岐にわたります。患者によって異なりますが、一般的な症状には以下のようなものがあります。まず、行動変化が見られ、奇怪な行動や社会的なルール、また感情の制御ができない、感情の爆発や無関心が現れることがあります。言語に関しても問題が発生し、食事摂取量の変動、会話の中で嘘をついてしまうこともあります。

診断には、病歴の詳細な収集、神経心理学的評価、脳画像検査(MRIやPETスキャン)、血液検査、遺伝子検査などが用いられます。家によって行われ、他の認知症との区別が行われます。

現在、前頭側頭型認知症に特効薬は存在せず、治療は症状の管理や生活の質向上を目指すものです。 薬物療法、行動療法、言語療法、リハビリテーションなどが利用されますが、非常識な行動や暴力などがあまりにひどい場合は一時的な入院も選択肢となることがあります。

家族や介護者へのサポートも非常に重要です。早期の診断と正しいケアが、この疾患に対するアプローチとなります。

2:認知症の原因

2-1:遺伝

認知症の遺伝は家族性認知症と呼ばれる症例です。特定の家族内で認知症が遺伝する状況を指します。 特定の遺伝子変異が認知症の発症リスクを高める可能性が高いです。一例として、アルツハイマー病に関連するAPP、PSEN1、PSEN2などの遺伝子変異が家族性認知症の原因となることがあります。

ただし、認知症は単純な遺伝疾患ではなく、多くの場合複数の遺伝子と環境問題が相互影響し合って発症することが考えられています。。

遺伝性認知症のリスクを理解することは、家族の認知症歴を知り初期の診断や予防策を考える際に有用です。活動の推進、定期的な医療チェックアップなど、認知症のリスクを軽減するために重要です。

生活習慣や身体疾患などの後天的な環境要因が40%

先天的な遺伝要因が約60%

2-2:血管性認知症 

血管性認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多い認知症で、60歳~70歳台の男性に多い傾向があります。脳梗塞(脳の血管が詰まる)や脳出血(脳の血管が破れて出血する)などいわゆる脳卒中にともなって引き起こされます。血管がつまり血流が不足している領域の神経細胞の機能が失われたり、出血によって溜まった血液に脳が圧迫されたりすることで様々な症状が現れます。

運動不足や喫煙、肥満、大量の飲酒などの体にいいとは言えない生活習慣は脳卒中の危険因子です。生活習慣の乱れは発症リスクを高めます。もの忘れのほか、見当識障害や実行機能障害など、アルツハイマー型認知症などでもみられる症状が生じます。パーキンソン症状や歩行障害、嚥下障害、排尿障害などの身体的な症状に加え、抑うつや感情失禁(突然泣き出したり、笑いだしたりする)などが起こることもあります。障害される脳の領域によって、これらの症状が生じたり、生じなかったりするのが血管性認知症の特徴です。

血管性認知症の診断は、医師による詳細な医療歴の収集、神経学的評価、脳画像検査(MRIやCTスキャン)、血液検査などを含みます。診断は他の認知症のタイプとの区別が重要です。

治療方法としては、脳卒中のリスクを高める糖尿病や高血圧などの基礎疾患がある場合は、それぞれに対応する薬物治療を行います。脳卒中そのものの予防に血液を固まりにくくする薬や、血圧を下げる薬を用いることもあります。血管性認知症はアルツハイマー型認知症を合併していることも多く、その場合は抗認知症薬が使われることもあります。非薬物治療としては認知症の進行や症状の悪化を招く脳卒中の発作を予防するため、規則正しい食生活や運動、禁酒、禁煙などの生活習慣の改善を行います。歩行障害による転倒を防ぐために自宅の環境を見直す、感情失禁に対しては冷静さを失わずに相手の話に耳を傾けるなど、個々の症状に合わせた対応も大切です。

2-3:他の疾患による認知症

認知症は、脳の中の変異だけで起こるわけではありません。その他、さまざまな身体疾病によっても引き起こされます。例えば、肝不全や腎不全、甲状腺機能低下症など、一見、関係がないように感じられる病気でも、認知症の原因になり得るのです。認知症の症状があるのに、アルツハイマー型認知症など、他の精神疾患や神経認知障害の診断基準を満たさない場合、過去の病歴などから「特定の疾患による認知症」と診断します。

EX)構造的病変、心不全による低灌流に関連した低酸素症、内分泌疾患、栄養疾患、他の感染症疾患、免疫疾患。肝不全あるいは腎不全、代謝性疾患、他の神経学的疾患

3:認知症の症状

3-1:記憶障害 

前認知症にみられる記憶障害や対人反応の特徴は、短期記憶_(ついさっき)が苦手、健忘感(物忘れ感)がない、全体健忘(食事の内容を聞かれた時に一部分ではなく全体を忘れている)、カンニング力の低下等があります。

①短期記憶の障害:認知症患者は、新しい情報や出来事を覚えることが難しくなります。例えば、家族や友人との会話が短時間で忘れられたり、日常の予定やタスクが記憶できなくなります。

②長期記憶の問題:認知症患者は、自分の過去の出来事や経験を思い出すことが難しくなります。これにより、家族や自分自身の生涯の重要な瞬間が忘れられることがあります。

③物事の所在を忘れる:認知症患者は、物事を保管した場所や置き忘れたものを思い出すことが難しくなります。家の鍵や眼鏡、貴重品などが頻繁に行方不明になります。

④日時や季節の認識の喪失:認知症患者は、現在の日付や季節を正確に把握することが難しくなり、時折混乱を経験します。

⑤人物の識別の難しさ:認知症患者は、自分自身や身近な人々を識別することが難しくなることがあります。親しい家族や友人の名前を思い出せないことがあります。

⑥重複の発生:認知症患者は同じ質問や話題を繰り返し提起することがあります。これは、短期記憶の喪失によるものです。

⑦時間の感覚の喪失:認知症患者は、時間の経過を正確に把握することが難しくなり、日中と夜間の区別がつかないことがあります。

3-2:判断力の低下

判断力は脳の「前頭葉」という部分が機能することで働きます。前頭葉は、病気や外傷、加齢による脳の老化などでその機能が低下することがあります。前頭葉の機能低下によって判断力が衰えると、社会生活を営むうえでさまざまな問題を引き起こします。

①意思決定の難しさ:認知症患者は、複雑な意思決定や選択に対処するのが難しくなります。例えば、医療の選択肢や財政的な決定などが含まれます。

②判断の遅れ:認知症患者は、判断力の低下により、質問に対する回答や行動の決定に時間がかかることがあります。この遅れは、日常生活での効率性に影響を与えることがあります。

③危険な行動:判断力の低下は、危険な行動につながることがあります。認知症患者は、リスクを適切に評価できず、火の取り扱いや交通安全に関して問題を引き起こすことがあります。

④財政的な問題:認知症患者は、財政的な判断力にも影響を受け、財産管理や詐欺に巻き込まれる可能性が高まります。

社会的影響:判断力の低下は、社交的な関係にも影響を与えることがあります。認知症患者は、友人や家族との関係を保つのが難しくなることがあります。

⑥過度の依存:認知症患者は、判断力の低下により、日常生活の決定を他人に依存することが増えることがあります。

⑦適切なサポートの必要性:認知症患者の判断力の低下に対処するために、家族や介護者が適切なサポートを提供し、安全な環境を維持することが必要です。

3-3:言葉の理解や表現の困難  

認知症が進行すると、言葉を見つけることや、理解することが難しくなります。そのため自分の言いたいことを相手に伝えることができず、また、相手が話している内容が理解できなくなります。この患者さんも、問われている内容が理解できず、痛みを感じていても「痛い」という言葉が見つけられず、表現できないでいる可能性が考えられます。

また、認知症が進行すると、注意を集中することが難しくなります。そのため、自分に向けて問い掛けられていることに、気づいていないのかもしれません。

認知症の初期では、同じことを何度も言う、つじつまの合わない会話をするなどから、周囲から冷たい対応をされがちです。そのため認知症患者はとても傷つき、人とかかわる意欲が削がれてしまうことがあるのです。人とコミュニケーションをとらないと言語機能はいっそう速く低下しますし、顎関節の拘縮や声帯の萎縮、肺活量の低下を引き起こし、ますます発語が困難になります。

さらにこの患者さんの場合、がんの進行や転移により、疼痛や倦怠感、悪心などで、体力や意欲を消耗していると考えられます。このような身体的苦痛により、発語に対する意欲も低下し、問い掛けに答えない状態と考えられます。

3-3-1:失語への対応

①話しかけるときの環境を整える(聞き取りやすいように周囲の雑音、動くものなど患者さんの集中の妨げになるものを取り除く)

②自己紹介をする(話しかけている自分が誰なのか伝える)

③ゆっくりおちついて、短くはっきり伝える

④表情、しぐさ、動作などの帆言語的コミュニケーションで伝える(話しかける際に肩に手を置くなど)

⑤痛みのサインを見極め、共有する

4:家庭での支援と生活環境の工夫

4-1:家庭でのサポートの重要性

家庭でのサポートは、認知症患者にとって非常に重要です。以下は、その重要性について詳しく説明します。

4-1-1:安心感と安定性の提供

認知症患者は、自分の状態に戸惑いや不安を感じることがあります。家庭環境は患者にとって馴染みやすく、安心感と安定性を提供できます。

4-1-2:日常生活の支援

認知症の進行に伴い、自己ケアや日常の活動が難しくなります。家庭でのサポートは、食事の用意、入浴の手伝い、服薬の管理など、日常生活の基本的なニーズを支えます。

4-1-3:コミュニケーションと感情のサポート

認知症患者とのコミュニケーションは挑戦的な場面もありますが、家族やケアギバーは理解と共感を示し、患者との関係を維持する役割を果たします。また、感情的なサポートも重要であり、患者が安心 感を感じられるよう助けます。

4-1-4:安全確保

認知症患者は、時間や場所の認識が混乱し、迷子になることがあります。家庭でのサポートは、安全を確保し事故や危険から守る役割を果たします。

4-1-5:認知機能の刺激

家庭での活動や課題を通じて、認知症患者の認知機能を刺激することができます。脳トレーニングゲームや記憶トレーニングなどを取り入れることで、患者の認知機能の維持に寄与します。

4-1-6:尊重と尊厳の保持

家庭環境では、患者が自分らしい生活を送ることができ、尊重と尊厳が守られます。個別のニーズや好みに合わせたケアが提供されることが大切です。

4-1-7:コストの削減

認知症患者を施設に預けるよりも、家庭でのサポートが費用面で優れています。家族やケアギバーがサポートを提供することで、高額な介護施設の費用を削減できます。

4-1-8:家族の結束

認知症患者への家庭内ケアは、家族の結束を高める機会でもあります。家族全体が協力し、愛情とサポートを提供することで、困難な状況に立ち向 かう力が強化されます。

家庭でのサポートは、認知症患者の生活の質を向上させ、家族全体にとっても有益です。家庭内でのケアとサポートは、専門の医療機関と連携しながら、患者のニーズに合わせた適切なケアプランを立てる重要な役割を果たします。

参考文書:

アルツハイマー型認知症とは?

レビー小体型認知症とは?

前頭側頭型認知症とは?

認知症は遺伝する?

血管性認知症とは?

こころのはなし

認知症理解する

言葉が理解出来ない場合【認知症患者とのコミュニケーション】

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