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認知症と物忘れの違い、その間の段階について

最終更新日 2023/10/23

日常生活で物忘れが増えると、不安や疑念が生まれることがあります。しかし、認知症と単なる物忘れの違いを理解し、その間の段階を把握することは重要です。この記事では、認知症と物忘れの微妙な境界に着目し、早期の兆候を見逃さずに、家族や自身の健康をサポートする方法を紹介します。

1:認知症と物忘れの違い

1-1:物忘れは一時的な現象、認知症は進行性の病気

認知症と物忘れの違いは自分が何かを忘れていることを覚えてるかどうかです。前者は覚えておらず、後者は覚えています。物忘れは一時的な現象であり、通常は一時的なストレスや疲労、注意散漫などが原因で起こります。例えば、鍵の場所を忘れたり、人の名前を思い出せなかったりすることがありますが、これらは一般的には短期的な問題であり、適切な休息やストレス管理、注意力向上の方法などを用いることや時間とともに改善することが期待されています。


一方、認知症は進行性の病気であり、脳の機能が徐々に損なわれていく状態を指します。認知症の症状は物忘れだけにとどまらず、判断力や記憶力、言語能力、日常生活のスキルなどが次第に低下していきます。認知症は年齢とともにリスクが高まることがあり、治療法は限られています。

したがって、物忘れは通常、短期的な問題であり、人々が経験する一般的な現象ですが、認知症はより深刻で進行性の病気であり、医療の専門的なケアが必要です。認知症の早期診断と適切なサポートが提供されることは、患者とその家族のために非常に重要です。

1-2:認知症には思考能力の低下や日常生活への支障がある

認知症と物忘れは、認知機能に関連する現象ではありますが、その性質や影響は大きく異なります。認知症は、思考能力の低下や日常生活への支障が顕著に現れる病気であり、以下に症状の詳細を示します。

①記憶力: 認知症患者は短期記憶や長期記憶の問題を抱えることが一般的です。認知症の方は過去の出来事や日常の情報を覚えにくくなり、しばしば過去の出来事を忘れることがあります。

②判断力: 認知症患者は判断力にも影響を受け、適切な判断を下すことが難しくなります。例えば、財政的な決定や危険を避ける判断などが困難になります。

③言語能力: 認知症は、言語理解や表現にも影響を与えます。患者は言葉を理解しにくく、適切な言葉を見つけることが難しくなります。

④問題解決能力: 認知症患者は複雑な問題を解決することが難しくなります。簡単な日常の課題にも対処するのが難しくなります。

⑤空間認識能力: 空間認識能力が低下することで、認知症患者は場所を迷いやすくなり、外出時に迷子になることがあります。

⑥日付や時間の把握: 認知症患者は日付や時間の感覚を失い、曜日や季節を理解できなくなることがあります。

⑦家事や自己ケア: 認知症の進行に伴い、認知症患者は自己ケアや日常の家事を遂行するのが難しくなり、介助が必要になることがあります。

⑧思考の混乱: 認知症患者は思考が混乱し、現実と幻想が交錯することがあります。これにより、認知症の方の行動や発言が予測困難になることがあります。

以上のような認知機能の障害が積み重なることで、認知症患者は日常生活においてさまざまな問題に直面し、独立した生活が難しくなります。このため、認知症の早期診断と適切なサポートが非常に重要であり、患者と家族の生活の質を向上させるのに役立ちます。

2:物忘れ(MCI)の段階とは?

2-1:一時的で通常の生活大きな支障はない物忘れの段階はMCI

物忘れの段階には、通常の忘却と認知症との間に位置する中間的な状態が存在します。これを「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」と呼びます。以下の文章で内容について説明します。

①軽度認知障害(以下MCI)とは:一般的で通常の生活に大きな支障を及ぼさない物忘れの段階を指します。MCIは、認知機能において通常の年齢に関連する変化よりも著しい問題があるが、認知症の診断基準を満たさない状態です。

具体的には、MCIの人々は記憶、言語、判断力、問題解決能力などの認知機能において軽度の変化を示すことがあります。

②MCIの特徴:MCIは通常の忘却よりも明らかに顕著な記憶の問題がありますが、日常生活において大きな支障を引き起こすほどの認知機能の低下は見られないため、独立した生活を維持することができます。

しかしながら、MCIの状態にある人々は医療専門家の監視とアセスメントが重要です。早期に発見され、適切なケアや認知療法が提供されることで、MCIの進行を遅らせたり、アルツハイマー型認知症への進行を防いだりする可能性があります。

したがって、MCIの診断は重要なステップであり、本人と家族にとって将来の認知機能の状態を理解し適切な対策を講じる手助けになります。

③MCIの種別:MCIは発症している症状により、さらに細かい種別に分類されます。

  • ・アムネジック型MCI:記憶機能に障害が起きている場合
  • ・多領域型MCI:記憶機能に加え、そのほかの機能でも障害が起きている場合
  • ・非アムネジック型MCI:記憶機能以外で1つ障害がある場合
  • ・非アムネジック型多領域MCI:記憶機能以外で複数障害がある場合

2-2:MCIは、認知症に進んでしまうのか?

MCIは一般的には認知症に進行する可能性がある状態ですが、個人差があり、処置の内容によって変化するケースが多く必ずしも進行するわけではありません。以下の文章で、MCIの進行について詳しく説明します。

認知症とMCIの関係:国立長寿医療研究センターの研究結果において、MCIの高齢者の4年間追跡調査結果では約46%は適切な処置を重ねることで正常に戻ったという数値も出ている通り、MCIと診断された場合であっても、必ずしも将来認知症まで進行することはないとされています。


※参考文献:地域在住高齢者における MCI(軽度認知機能障害)早期発見および回復に向けた取り組みと将来の展望

しかし、MCIとの診断後適切な処置を行わずに放置してしまった場合、5年以内の認知症進行率が40%といったデータもあるため、早期発見と処置が必要になります。

※一般的には、アムネジック型MCIはアルツハイマー病との関連性が高く、認知症に進行しやすいと言われています。

MCIの診断を受けた人々は、医療専門家と協力して進行のリスクを評価し、適切な管理策を検討することが重要です。定期的なモニタリングと認知療法を通じて、認知症の進行を最小限に抑えることができる場合もあります。

3:認知症の予防方法

3-1:予防には適切な食事や脳を活性化する活動が有効

認知症は年齢とともにリスクが増加する疾患ですが、適切な予防(適切な食事や脳を活性化する活動)を取ることでその発症リスクを低減することが可能です。予防には、以下のような要素が有効です。

①適切な食事: 脳の健康には栄養が重要です。バランスの取れた食事、特にオメガ-3脂肪酸を多く含む魚や、抗酸化物質を豊富に含む果物や野菜を摂取することが重要です。また、糖分や飽和脂肪酸を控えることも脳の健康に良い影響を与えます。

②身体の活動: 身体的な活動は脳を活性化し、血流を改善します。定期的な運動は認知症のリスクを低減し、脳の健康をサポートします。

③知的活動: 脳を刺激する知的な活動も認知症予防に役立ちます。読書、パズル、クロスワード、学習など、脳を使う活動を積極的に取り入れましょう。

④社会的活動: 社会的な交流やコミュニケーションは脳の健康に寄与します。友人や家族との交流を大切にし、孤立感を避けることが重要です。

⑤十分な睡眠: 睡眠は脳のリフレッシュに不可欠です。十分な睡眠を確保し、睡眠障害を予防しましょう。 

⑥ストレス管理: 長期間のストレスは脳に悪影響を与えることがあります。ストレス軽減の方法を見つけ、リラックスの時間を持つことが大切です。

⑦医師の指導: 既存の健康問題やリスクファクターがある場合、医師の指導のもとで適切なケアを受けることが大切です。

総合的なアプローチで、これらの要素を組み合わせることが認知症の予防に効果的です。健康的な生活習慣を維持し、脳を刺激し、心身の健康を維持することが、認知症の発症リスクを低減するのに役立ちます。

3-2:認知症の早期発見と治療の重要性

認知症は進行性の脳疾患であり、早期段階からの発見と適切な治療が非常に重要です。

①治療の効果: 早期の認知症診断に基づいた治療や介入は、病状の進行を遅らせることができる場合があります。特定の薬物療法や認知療法などが、症状の軽減や患者の生活の質の向上に寄与します。適切な治療が遅れると、病状が進行し、治療の選択肢が限られてしまう可能性が高まります。

②生活の質の維持: 早期診断と適切な治療は、患者の日常生活の質を維持するのに役立ちます。認知症患者は独立した生活を送るのが難しくなり、介護やサポートが必要になることがあります。早期の介入により、自己ケア能力や日常生活スキルをできる限り維持できる可能性が高まります。

③家族や介護者への負担軽減: 早期の認知症診断は、患者の家族や介護者にとっても大きな負担を軽減する助けとなります。病状が進行する前に、適切なケアプランやサポート体制を整えることができ、家族や介護者が患者をサポートするためのリソースを活用できます。

④認知療法の効果: 認知療法は認知症患者に対する重要な治療法の一つであり、早期段階からの実施が効果的です。この療法は認知機能を向上させ、症状の進行を遅らせる効果があります。

総合的に、認知症の早期発見と治療は、患者の健康と生活の質を改善し、家族や介護者にも負担を軽減する重要なステップです。したがって、認知症の症状が疑われる場合、早急に医療専門家に相談し、適切な評価とケアプランの策定を行うことが勧められます。

4:まとめ

4-1:認知症と物忘れの違いを理解しよう

物忘れは通常、一時的なストレスや疲労、注意散漫などが原因で起こる一次的な現象であるのに対し、認知症は脳の機能が徐々に損なわれていく進行性の病気である点が異なっています。

異なる点について、以下詳細の説明をします。

①忘れている範囲:単なる物忘れの場合、朝食は食べたが何を食べたか忘れた、鍵をしまったがどこにしまったのか忘れた等、経験した出来事の一部を忘れているケースが多いです。

一方で認知症の場合は、朝食を食べたこと自体を忘れている、鍵をしまったこと自体を忘れている等、経験した出来事の全体を忘れている場合があります。

②自覚の有無:通常、物忘れは「何か用事があったのに忘れてしまった」等、忘れてしまったことへの自覚があります。

一方、用事があったことすら忘れる、用事のヒントをもらってもピンと来ない等自覚がないといった場合は認知症が疑われます。

③妄想の有無:物忘れでそもそも起きない現象として、お金を誰かにとられた等と誤認する妄想や幻想といった症状があります。

単なる物忘れと認知症では、生活への支障の程度が異なります。

上記の点以外にも基準はあるため、該当していない状態でも、総合的な判断により認知症として対処する必要が出てくる場合があります。

後述の早期発見、早期処置を行うためにも少しでも早い受診を行う等周囲の協力の必要があります。

4-2:MCIについて理解しよう

MCIは「通常の忘却と認知症との間に位置する中間的な状態」や「通常の年齢に関連する変化よりも著しい問題があるが、認知症の診断基準を満たさない状態」を指し、これらについて理解することは、

  1. ①早期の介入と治療
  2. ②リスク評価
  3. ③心の健康に対するサポート
  4. ④ライフプランニング

など、個人の健康と生活の質を向上させるために欠かせないステップです。MCIの診断を受けた場合、医療専門家のガイダンスを受け、適切な管理戦略を検討することが非常に重要です。そして、この知識は認知症や認知機能の状態を理解し、予防策を講じるための重要なステップとなります。

4-3:早期発見と適切な対策が必要

認知症は進行的な脳疾患であり、早期発見と適切な対策が非常に必要です。

認知症の早期発見と適切な対策は、患者とその家族にとって非常に重要なステップです。認知症が疑われる場合、早急に医療専門家に相談し、適切な評価とケアプランの策定を行うことが勧められます。そして、早期の診断と介入が病状の進行を最小限に抑え、生活の質を向上させるのに役立つことを覚えておくべきです。

4-4:家族のサポートと協力の大切さ

家族のサポートと協力は、認知症患者のケアにおいて不可欠です。家族は共に団結し、患者のニーズを理解し、認知症の方の生活を充実させるために尽力すべきです。家族の協力により、認知症患者の生活がより豊かで、支えに満ちたものになります。

参考文献:

認知症と物忘れの違い
物忘れの段階(MCI)とは?
認知症の予防方法

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